世界中のスノーファンが集まる街、北海道・ニセコ。毎年新しいホテルやコンドミニアムが建ち、近年は外国人が多いこの街。ゲレンデを滑っても、もちろん外国人だらけだが、スノーフィールドは「ニセコルール」というもので守られている。来シーズンよりニセコルールにて装備の着用が義務化されるにあたり、変化の今を見てきた。
Photo&Text: HAL

今年は暖冬で雪が少ないと各地で騒がれているが、ココだったら大丈夫じゃないか?
そんな期待をこめて、今年も毎年来ている1月中旬にニセコを訪れた。

毎年この時期に行われるニセコツアーは、某スノーボード専門サイトのSNSをきっかけに始まったツアーだった。私がスタッフとして参加したのがもう10数年前、それからずっとスタッフとして参加しつづけている。このニセコツアー自体も常連のお客さんのリクエストで続いているもので、年一回の集まりのようなものだ。それでも毎年新規のおひとり様や、久しぶりに参加してくれる方など様々な方が参加してくれている。

私もただのニセコファンといえばいいだろうか?年一回しかニセコにはこれないが、それでもいちスノーボーダーとしてニセコの街の変遷は見てきたつもりだ。

そんな私でも、今年は雪が少ないと感じた。ブッシュや笹、隠れ切り株がある所が多いとガイドも話していた。それでもゲレンデには困らないほど雪はあるし、降った次の日にはパウダースプレーをあげられるほど楽しめる。実際、前入りしたメンバーたちのウハウハ動画を自慢げに見せつけられた。まあ相手は自然だし、訪れるタイミングによって雪が少ないこともある。長年のツアーで雨だったこともあるし、ガリガリの雪だったこともある。それでも毎年来てしまうのは、ニセコという特別な場所のせいかもしれない。

ニセコの玄関口であるニセコグランヒラフの.BACE前。雪が降った翌日はこの場所に多くの人の行列ができる
ゲレンデにはそれなりの雪があるし、コースを滑る分には申し分ないコンディション
今年もニセコツアーに参加

最近は、白馬や湯沢でも外国人を多く見かけるが、ニセコには昔から多くの外国人がいた。初めてニセコに訪れたときは、まるで欧米のリゾートに来たかのような感覚で、オージーのおじさまに声をかけられてドキドキしたものだ。今ではアジア圏の方々も多くいるし、年々新たに建築されるコンドミニアムやホテルは、もうどの建物が昨年建ったものなのかなど、覚えられないほど乱立している。
ちょうど私が行った日の翌日がオープンという「パーク・ハイアット・ニセコ HANAZONO」の建物群は、このエリアの外観を一変させた。それに伴い、HANAZONOエリアのカフェの場所も新しくなり、リフトがある部分から歩かなくてもよくなった。開発はまだまだ進むようで、噂ではリフトも6人乗りになるとか?HANAZONOエリアにもゴンドラができる予定があるらしく、まだまだこのエリアの様変わりは留まる気配がない。
さらに、東山エリアにも「ザ・リッツカールトンリザーブ」という富裕層向けのコンドミニアムが今後建つらしく、ニセコは世界の富裕層が集まるエリアになってしまった。

奥に建ち並ぶのが「パークハイアットニセコ HANAZONO」ようやく完成したようだ
花園第一リフトの横に新しく出来たレストラン「HANAZONO EDGE」開放的な空間で座席数も増え、よりラグジュアリーになった
相変わらず多くの外国人でにぎわっている
「Hana1 cafe」は場所もそのままにリニューアル、外で美味しいコーヒーとマフィンが楽しめるのは健在だ

そんな激変したニセコに22年前に移住し、かつてPSA公認プロで、GENTEMSTICKライダーである永田ガイドに話を聞いた。

-ニセコに移住していかがですか?
「住みだしたころは仕事もなくて大変だったけど、今は外国人達で盛り上がったことで、人が多いとか、金額(物価)が高くなったとか、昔のニセコが良かったとか言う人もいるけど、僕自身はこのように盛り上がってくれたおかげで雇用も増えて、仕事が選べるようになったし、時給も上がっているから、そういう面ではすごく良くなったかなぁと思う。
自分にとってのニセコ、まぁいいから住んでいるんだろうね。ニセコは自分にとって人生やねん、人生をかけているからね。でも、根底はスノーボードが好きだってことじゃないかな。
やっぱりニセコは雪質と地形がいいよね。本州とか下りても、アメリカとかニュージーにトリップしても、ニセコみたいにコンスタントに上質なパウダーが滑れるっていう地域はないんじゃないかな。いつも自分は恵まれているなと思いながらトリップしているよ」

毎年ニセコツアーでガイドを勤めてくれる、永田貴徳さん。毎回お客さんの要望に答えてお題を出しながら、カッコいい滑りをみせてくれる

ニセコエリアは独自のニセコルールというものがある。
安全に新雪滑走を楽しんでもらいたいという理念のもと、コース外は入ってはダメだと押さえつけるものではなく、ゲートを通って安全に楽しんでもらおうというものだ。
そして、20/21の来シーズンから新たに「ヘルメットとビーコンの装着」が義務化されるようだ。
ヘルメットの装着は最近だいぶ主流になってはきたが、日本ではまだまだ欧米人ほどの装着率ではないだろう。ニセコではほとんどの外国人がかぶっているが、日本人はまだまだかぶっていない人が多い。

HANAZONOエリアのド真ん中にあるストロベリーフィールズゲート。雪が多いときにはたくさんのマッシュに出会える場所
どの外国人もヘルメットにバックパックという装備で滑っている
外国人はスキーヤーもキッズもファミリーもやはりヘルメットをかぶっているのは当たり前のようだ

今回のニセコツアーでもお客さんにはヘルメットとビーコンなどの装備をつけてもらい、行動してもらった。普段つけないヘルメットを邪魔に思うかと思ったが、自分にフィットするものを選べば違和感はない。つけていることを忘れる?とまではいかないが、最近のものは軽量化が進んでいるので不快に感じることはほとんどないのだ。なぜヘルメットをかぶるのか?を考えれば当たり前のことだが、コース外を滑るということは自然の立木にぶつかることも、枝にささることだってある。もちろん、ふいにくる逆エッジによる転倒も守ってくれる。
この時は、運よくピークに上がるゲートが開いた、正にラッキーとしかいいようがない。装備があってこそ、ゲートを通りピークにあがって素晴らしい景色を見ながらライディングを楽しむことができる。

来期を見据えて、お客さんにもヘルメットを着けてもらった。カッコいいヘルメットのかぶり方というのもこれからの課題かも
ビーコンの動作チェック。ガイドがお客さんのビーコンが動いているかチェックするのも重要
永田ガイドの装備はこんなカンジ。最近の主流は軽量化重視なよう。バックパックではなくDAKAINのベスト型のものに全てを入れている
永田ガイドのメットのかぶり方。ご参考までに

ニセコルールにはこう書かれている。
「ビーコン、プローブ、ショベルの携行を強く勧める。これらの道具は万一の時にあなただけではなく仲間の命も救えるかもしれない」と。
もちろん持っているだけでなく、使う技術も必要。そして、コース外を滑るということは、様々なリスクがあり危険だということは忘れてはいけない。ちなみに補足として、「コース外の救助、捜索には費用(最低10万円)が請求される」ということも書かれている。「ちゃんと請求されるよ」と、永田ガイドも話していた。命の値段が安いはずはない。「知識や技術、道具を過信せず常に用心すること」これもニセコルールに書いてある。楽しくスノーボードをするために、気持ちよく安全に滑るためのルールということだ。

運よく開いたピークへのゲート、山頂付近のリフトからピークまでは歩いて20分くらい

雲海に浮かぶ羊蹄山を幻想的に望むことができた。この日は風もなく比較的歩きやすかったが、山の天候は変わりやすいので装備は万全に。

日々変化するニセコ。それは私たちスノーボーダーにとっていい方向に変化することに期待していきたい。きっと来年も特別な場所ニセコを仲間とツアーで訪れるだろう。どんな変化をしているか、今から楽しみだ。

北海道ニセコのゲレンデガイド “Niseko Pleasure Tours”

スノーバム スノーボードツアー&キャンプの専門旅行社

ニセコグランヒラフ