価値観を発信しつづけ本質を追い求めるbuildプロジェクトとは?

世の中のユーザーが実際にウェアを選ぶ際にどれを選ぶか悩む事が多いはず。そしてその中で色や素材、防水性、さらに使い心地にもこだわりながら自分が着たいウェアを選ぶ。そしてウェアをリリースするブランドにも様々な干渉やコスト、今迄のモノ創り具現化方法という枠の中で最大限「満足」の行くプロダクトを生み出していくのだ。

しかしbuildプロジェクトは「満足」ではなく、世の中にリリースするプロダクトと追い求めるプロダクトの狭間でbuildが出した「本質」を追求しているのだ。

今回はその「build」の生まれた背景から理念、「モノ創り」について詳しく聞く事ができた。

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A) buildが生まれた背景について教えて下さい

まず今まで良い物を創り続けている、創り出している基盤があるけどユーザーさんに届けられていないのではないか?という疑問を感じ続けていました。常日頃横乗りの事も考えていてその世界観をユーザーさんに伝えて共感してもらいたい。それを物創りで行っていきたいと考えています。

buildが生まれた背景としてA7は12シーズンぐらい続け、ブランド自体の価値観を出し続けていますが、ある一定の時点で「ビジネスというのもは評価される事だ」という風になりがちで、ブランドイメージを見失う事もあります。

認められて評価を得て、それで「得た」ものも確かにあります。それは物創りのスキルや人との関係性などが挙げられます。でも失ったモノの方が大きいな、と。そこからかなり模索し続けた事もありましたが、やはり始めた時の当初の純粋に前だけ向いて走り続けていた原点を再確認する為に生まれてきたのが当時のbuildコンセプトなんです。

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丁度一昨年に今のbuildの原型が生まれました。その時にこのコンセプトの着地点を明確にしました。それは「売る、売らないは別としてこのチーム内でできる一番良いもの、妥協しない物を創ろう」という事です。一つの形として自分自身のなかで今まで培ってきた物創りや制作の経験とかを最大限活かしたプロダクトを創ろう、という決意です。

そこで出てきたアイディアというものは衣服としてタブーとされる事や裁断とか縫製というものを全てもう一度クリアーにしていかないと到底造り上げることができないな、というアイディアでした。

その時点では商売に繋がるようなものでもなかったのですが私達はそこに光と希望を感じたんです。そこでイメージとしてデザインしたモノをパタンナーに相談してリアルなプロダクトとして生み出してくれました。ここまで難しい平面のデザインをパタンナーがリアルに具現化するのは非常に大変だったと思いますし、今思うとここまでこのチームの心に響くプロダクトが出来上がるとは思ってもいませんでした。

でも当時は仕上がったものは社内において、もの凄く別な意味で注目される物でした(笑

なぜなら今迄見た事も無く作った事も無いような、自社で今迄創り上げていたプロダクトとは、まるでかけ離れるものだったからだったと思います。今思うと会社の上部の人達は自社の今迄の「枠」と外れたアイディアを形として創り上げた事に驚いたからなんでしょうけども。

そのような中で展示会でbuildを発表しましたが、その時に今までで取引が無かった方々から多くの反響があり、これまで色々ありましたがこの方向性は間違ってはいなかったな、という事を肌で感じ取る事ができ、buildというモノの方向性をチームとして確信する事ができました。

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B) buildプロジェクトというものはどのような物でしょうか?

実は当初buildコンセプトはA7の中の一つとして創り出されました。「A7のプロダクトチームが今迄のA7とは違うものを提案」する事がメインだったのですが、そうなるとジャンルを固定されるわけで、それはbuildを檻の中に固定させてしまう事にもなりかねない事に気がつきました。だからbuildはブランドとして位置づける事はやめ、僕たちが本来こうしたかった、やりたかった、という事を形として創り上げたものがbuildであり、そういう思いから生まれてきたのがbuildプロジェクトなんです。

一つのブランドとしてこうあるべきだと決めず、一つのジャンルにとらわれないものとして「プロジェクト」にするべきだと感じ、「こうでなければならない」「このようにあるべきだ」という固定概念にとらわれないようにしました。

ただ自己満足で終わらせるわけではなく、ウェアの持つ価値観を発信していくようなプロジェクトという位置づけですね。

今では服としての表現をしていますが、今後はジャンルにとらわれないような発信を行っていきたいとも考えています。ですのでbuildは「~用」として売り出されているわけではありません。しかしどのようなコンディションでも満足して頂けるクオリティを備えています。

buildのネーミングは「スクラップ&ビルド」から来ています。今迄の「こうじゃなきゃいけない」という縛りを解き放し、本質を明確にし、一から創っていこうという意味です。

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デザイナー(クチュリエ)の近藤敏雄とパタンナー(モデリスト)の鈴木智香子

 

 

C) 服創りにおいてどのような理念を持っていますか?

このチームとしてデザインとかモノ創りとしてよく話し合いますが、僕たちは過剰なディテールで表現が肥大化する事は避けたいと思っていますので、必要最小限に絞ってデザインしています。ディテールを加えることではなくて、逆に根底まで削り取ることで本当の意味での「本質」が語りだし、使って頂ける皆さんに感動と満足を与えられることができると信じているんです。

誰でも「かっこ良く」ありたいと思う時があるはずです。そうする為に見た目として着飾るわけですが、しかしはたしてその人は本当にカッコいいのでしょうか?どのブランドの服でも構いませんが、その服が持つ本質がはっきりと表現され、その「表現された本質を理解しながら着る」ということがカッコいいと私達は感じています。ですから私達はbuildの本質を最大限に表現できるプロダクトを目指しています。

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D) この理念を持ったプロダクトをどのような方に着て頂きたいですか?

このプロダクトの想いを共感してくれる人に着て頂ければ非常に嬉しく思います。シーンやジャンルやレベルということは関係ありません。実際に手に取って試着した時にプロダクトが発する本質を感じた方には是非着て頂いて、その方の側にいつもbuildプロダクトがあるとすれば、本当に嬉しい事だと思います。

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今回インタビューを行って感じた事は、世の中にリリースするプロダクトと追い求めるプロダクトの狭間で出したbuildの本質は、彼らの物創りの技術と情熱、人間性そのものを表現し、原点に戻るという事。

インタビューを終え、目の前に置いてあったジャケットを着てみた時に感じたジャケットと自分の存在感は、自分のライフスタイルに変化を起こしてくれるかもしれないという衝動を感じつつ、このジャケットを着ている自分のイメージが明確に頭に浮かんだ。

物創りとは素材と形だけでは計る事のできない、情熱とメッセージを発信できる素晴しい事でもあり、創りだすエネルギーの大きさを感じる事ができたインタビューとなった。

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