KARAKORAM(カラコラム)
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Karakoramに正社員として入社したのは19歳の時でした。大学は1年を修了していましたが、中退しました。ワシントン州ベリンガムにあるウェスタン・ワシントン大学に通った1年で私が唯一学んだのは、確かなことは何もない、ということでした。しかし僕にはスノーボードがありました。自分の将来がどうなろうとも、スノーボードはその道しるべになってくれました。あれから5年。私は3台のトラックと、数え切れないほどのキャンピングカーのセットアップを持っています。車中泊をしてきましたが、最近ではカーゴトレーラーを改造したタイニーハウスを、地元のスノコルミー峠と会社の倉庫近くのノースベンドに置いて暮らしています。製造からカスタマーサービス、イベント、マーケティング、メディアなど、私が最も興味のある分野で実績を積むことができました。そして何より、14歳の自分が想像していた以上に、スノーボード漬けの日々を送っています。日中はアルペンタール、夜は近くのサミット・セントラルでボーディングを。アルパイン・レイクス・ウィルダネスでスプリットボードを楽しみ、その合間に道路を何マイルも走る。数え切れないほどチェアリフトとスキントラックに乗っているうちに、これらの行為の本質を考えるようになりました。スノーボードは、表面的にはとても無意味なものです。しかし私たちはしばしばもう1日滑るためだけに、マズローの欲求階層説の階級を積極的にすっ飛ばします。車中泊ですらない夜、何週間もラーメン・ダイエットに勤しみ、恋人なんていないし、怪我だって数え切れない。それでもスノーボードに戻ってきました。私たちは皆、スノーボードのために生理的欲求と安全欲求という物質的欲求を無視しているのです。この一見、後ろ向きな思考回路の理由は人それぞれ。私の場合はコミュニティに行き着きます。毎冬、初めてリフトが回った時に再会する顔なじみの人たち。パウダースノーの日、見知らぬ者同士が放つ、言葉にならないポジティブなエネルギー。秋、集まってスノーボードの映画を見ながら、もうすぐ始まる新しいシーズンに向けて自分なりのトリックを考えること。自分が行ってみたい場所や、仲間と行くロードトリップのリストアップ。ここKarakoramで、そしてスノーボード・コミュニティで、私が見つけたあらゆる観点です。一度や二度は、山にいる人が少なければいいのにと思ったことがあるはず。確かに、その方がスノーボードに行くのに必要な多くのプロセスが簡単になるでしょう。リフト待ち、駐車場など、数え上げたらきりがありません。しかしスノーボードを一緒に楽しむ仲間がいなかったら、スノーボードはどうなってしまうでしょう。何をするにしても、それを一緒にする人たちがいてこそ。私の「それ」がスノーボードであることは、とても幸運なことだと思っています。

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