SBN × 藤田一茂 : 春の日本/白馬岳・立山

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春の日本/白馬岳・立山

4月末。
カナダから帰国した数日後、僕は白馬に向け車を走らせていた。
カナダでの楽しい、辛いキャンプライフ、ワイルドな生活から一変、ベッドや部屋、キッチンのある普通の生活の便利さを痛感しながらも、何か違和感を感じていた事を覚えている。
シーズン始まりから怒濤の日々で疲れ果てていた事もあり、シーズン最後にゆっくり春の日本の山を堪能しようか。と考えていたところで、丁度友達とタイミングが合った事もあり、結局、帰国2日程で白馬へ向かう事になった。
帰りの飛行機では山はもういいか。なんて気力を失っていた部分も多少はあったが、ふと気付くとパソコンを開き白馬の天気予報を見ている自分。
いくら疲れ果てていても、数日もすれば山の情報が気になってしまうのがスノーボード中毒者といったところか。
結局のところ、春は今しかないな。という考えに落ち着き、山に向かった。

道中には綺麗な桜も咲き乱れ、気分はすっかり陽気な春。
今回はテントを使った1泊2日。
ちょっと登ってちょっと滑り、綺麗な景色と星でも見ながら寝て、帰りに山の中で温泉に入って帰る。というなんともお気楽な旅。
しかし、見事に予想は外れ、気の緩みからか読みの甘さが全開。
かなりハードな旅になってしまった。というかシーズンで一番ハードだったかもしれない。(笑)

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白馬への道中、長野市から小川村、美麻を抜けると白馬の山々が一気に目の前に現れ、やっぱり白馬が好きだな。なんてよく思う事がある。
僕が一番好きな白馬の良い所というと山なのだけど、僕はあの山々の稜線に立った事が一度もなく、これは大きな矛盾じゃないのか?と考えさせられた。
白馬が好きですね~とか言っておいて、実際は何も知らない自分。
これは何かの導きなんだろうな。登らなきゃいけない。とお告げを貰った気がした。
全てを一気に知る事はできないが、ステップを踏んで、知ろうとする気持ちが大事だ。
そして、あの向こう側の景色はどうなっているのだろうか。かねてから興味のあった場所に自らの気持ちが合致した。
この春に行きたい場所も決まり、今回の最初のトリップはその下見と足慣らしといったところだった。

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フォトグラファーのitachan、友達と合流し、ゆっくりと山を登る。
あ~やっぱ山いいね~なんて言いながら3時間ほどで目的地へ。
昼から登りだしたので日が暮れるのは早く、テントを張り、空の様相をぼーっと眺める。
ぼーっとという言葉が本当に良く合う場面だ。

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日は落ち、星空と白馬の街の明かり。朝になると日は昇り空はピンク、オレンジ、青とだんだんと変わっていく。
自然の美しさは人間には作れないきめ細かさからくるのだろうか。

雪が緩むと目の前の斜面を数本滑り、次なる目的地、温泉へ。

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出発してから1時間ほど経過。
順調に向かっていると思っていたが、一向に温泉は現れない。
どうやらルートを間違え、一つ隣りの沢へと降りてしまったらしい。
トラバースと1時間ほど歩いたが、雪は汚くザクザク、全然気持ちよく滑れないし、歩くのもかなりしんどい。
結局温泉まで3時間ほどかかり、朝日の前から行動してるので付く頃にはヘトヘト(特にitachanが。笑)で、時間もないという事で温泉はパス。(笑)
そこから4時間半ほど歩き続け、夕方にやっと帰れる場所に着いた。
8~9時間を想像して歩き続けるのは良いが、予定してないこの時間はかなり辛い。
僕は日頃から歩いているので慣れてはいるが、itachanと友達は限界だっただろう。
頑張れ~といくら言っても返事は1回も返ってこない。それくらい疲れていたらしい。ごめんね。(笑)
しかし、この失敗をプラスに捉えると、テント、板を背負っていてもこれくらいはイケると言う事だ。
歩みを止めなければ止まる事もない。メンタルが一番大事だ。
次の目的地へは確か8時間。それまでは長く感じていた時間も、もう長くは感じない。
これも山が与えてくれたステップだったのだと思う。

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数日の天気待ちの末、天気の良い2日間に合わせ、カメラマンのKAJI、とライダー阪西翔と共に山へ向かった。
目的地は白馬岳(しろうまだけ)。
白馬と名の付く白馬の代表的な山で、白馬では一番高い山だ。
行きは栂池経由で8時間。テントで1泊し、次の日に目的の斜面を滑る。
下調べに打ち合わせ、あとは止める勇気を持って、山に入るだけ。

天気も良く、景色も最高。
ただ、稜線は登るにつれ歩くのがつらいほど風が強くなってくる。
強風の中、遠くに見える今から登る場所は、大丈夫か?と不安を煽ってくるが、近づくと風も弱まり、斜度もそこまでない。
遠くからは大きく見えるものも、近づくと小さくみえたりもする。
出来ないかもしれないという大きな壁も、ステップを踏んでそこに辿り着いた頃には次のステップが見えるようになっているだろう。

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8時間のハイクを終え、白馬岳の頂上へ辿り着いた。
白馬岳の頂上の眼下には白馬の街やスキー場はもちろん、富山県の立山や夕日に焼けた富山湾まで見渡す事ができる。
やっと念願の景色を見る事が出来た瞬間だった。

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北アルプスは富山と長野の県境になっているが、今、自分たちがいる場所はどっちになるのだろうか?
写真の左が長野、真ん中が北アルプス、右が富山。
実は明日狙っている斜面は右に写っている富山県の山で白馬からは見えない、白馬旭岳だ。
白馬岳から旭岳を眺め、明日滑る場所をイメージする。
3つラインはあるが、頂上から真ん中のラインが一番カッコイイかな。

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テントを張り、乾杯。
星空を見ながら語り合うのもこういった撮影の楽しみの一つ。
住んでいると決して明るいとは感じない白馬や長野市の灯りが一段と輝いて見える。
シーズン頭に、ここからこんな景色を見る事なんて考えてもいなかった。

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静かな朝、日の出と共に目覚めるのは気持ちが良い。
カナダで感じていた山での疲れが、また山の中で取り除かれていく。
寒い、大変、何がいいかわからない。昔は山に入る人をそう思っていたのか記憶もないが、経験と共に興味が変わっていったのだろう。
今では山に行かない生活が考えられない。

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旭岳の山頂まで登り、カメラマンのスタンバイが出来たらドロップイン。
出だしの斜面は転けたら死ぬであろう斜面。カナダでの経験のおかげもあり自分の中の線引きもまた変わっていた。
転けたらダメなとこで転けた事もあったし、良くないミスもたくさんしてきた。
ラッキーな事に生かせてもらっていて、以前の自分なら見えなかった所が見えるようになり、今そこを滑っている自分がいる。
今、半年前には見えなかった世界にいて、また数ヶ月、半年、1年、数年、数十年先とどんな自分になっているのか楽しみだ。
人生の楽しみは自分の世界をどんな風に作るか、作っていくかだと思う。
スノーボードは僕に挑戦する事、発見する事、そして仲間を与えてくれた。
いつまでもそんな人たちとたくさんの経験をしていけたら幸せだろう。

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天気予報通り、天気は悪くなる気配だ。予定通り山を下り、温泉へ。
1時間前までいた山の稜線を眺める事が出来るこの場所で、登り口から山頂、下り、あそこ辛かったな、また行きたいなと話す3人の気持ちは同じだ。
僕たちが実際にやった事は特別大した事ではないが、仲間と一緒に経験をしていくというのは本当に幸せな事で、そういった経験は自分たちの頭の中に深く刻まれていく。
僕たちが滑った斜面は、白馬岳の背後に隠れ、街からは見る事は出来ない。
白馬の街から見える北アルプスの向こう側を見たい。
白馬の代表する山に登りたい。そんな想いから向かった白馬岳。
僕の知らなかった白馬を見る事が出来、白馬がもっと好きになった事は言うまでもない。
一生で見れる景色や出来る事は決まっているが、白馬、山に多くの時間を割き、見ていきたいと思った今回の旅。
昔は人生まだまだだと思っていたが、今ではすっかり短いと感じるようになった。
なんたって人生残り50年くらいしかないのだから。

GWも終わり、スキー場はクローズ。
いよいよシーズンも終わりだ。
さぁ帰ろう。というところで小西隆文に丸め込まれ立山へ2泊3日で行く事になった。

疲れてはいるが、山の誘いを断れない自分。
あと人生あと50年くらい。山に行けるのは後何年だろう?
立山に行くチャンスなんて数えるほどしかないはずだ。

そんな気持ちでいざ立山に行くと、いきなり綺麗な夕日が出迎えてくれた。
自然の景色にはいつも驚かされるが、ここの夕日は本当に綺麗だ。
人の力では作れない、絶妙なセンスを自然は持っていて、いつも自分の頭を超え脳裏に突き刺してくる。
コニさん(小西隆文)誘ってくれてありがとう。(笑)やっと気持ちがノってきた。

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ノって来たのとは反対に、雪は悪く、天気も良くない2日間が続いた。
2日目。雄山まで登り、滑りだそうとすると一気に雲に覆われ、滑りづらい雪を下り、温泉へ。
温泉が終わると雨が降り出し、朝方までずっと雨と風。
そして翌朝は冷え込み、降った雨が凍って、山は氷の状態だ。
まぁそんな時もあるか。いつも天気の良い山ばかりなので、たまにはこんな山も悪くない。
そもそも自由に山にいれる事自体が幸せなのだから。

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ほぼまともに滑る事なく山を下り、森の中を探索する事になった。
立山といえば白く大きな山を想像するが、下の方には木がたくさんはえている。
大きな杉が立ち並ぶ中、ほぼ雪はないが何か出来ないかとあたりをウロウロとする。

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このシーズン本当にウロウロとしていた。
秋の立山に始まり、カナダ、日本、色々な場所を飛び周り、今また立山にいる。
初めてだらけの半年間。全てが新鮮だった。
新しいスノーボードと出会い、スノーボードが新しい自分と出会わせてくれている。
そしてこの春はその成果を知る良い機会になった。
半年前には何一つ見えていなかった事が、今は見えるようになっている。
半年前に滑れなかった場所が滑れるようになっている。
半年前にわからなかった事がわかるようになっている。
それはスノーボードに限らず全ての事において。

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新しい事に挑戦するというのは本当に楽しい。
新しいものというのは常に刺激的で、ポジティブな物だ。
心を突き動かし、心を変える事が出来る。
僕はスノーボードで新しい事に挑戦し、人生の楽しみ方を学んでいる。

立山から立山、ここでシーズンを締めくくり、次の挑戦へ向けまた新たな日々が始まった。

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ここまで読んでくれているみなさんへ。

いつもご愛読頂き、本当にありがとうございます。
シーズンの締めくくりという事で一言あいさつさせて頂きます。
自分の新しい挑戦の一つとして、この約1年間の出来事を僕の成長と共に書かせて頂いてきました。
歳月と共に、心に残る出来事と共に、すぐに心にも変化があるもので、色々とまとまってない部分は深化していると受け取って頂ければ幸いです。
やれば出来る。と良く言うものですが、僕はそれを信じています。本当に死ぬ気でそれをやった時、出来るようになるのです。
要は、覚悟があるかないか。やるかやらないか。単純です。
自分はその点、まだまだ未熟なところも多いですが、これからも高い志と共に励んでいきたいと思っています。
みなさんの人生がより良い物になるように。
僕もみなさんと共に成長していければと思っています。
これからも応援よろしくお願い致します。

藤田一茂

FORESTLOG DESIGN 

Text & Photo : Kazushige Fujita
Location : JAPAN (Hakuba,Tateyama)

この冬の藤田一茂の活動は2014年10月25日発売の「HEART FILMS “The Doors”」「HYWOD ”DIVISION”」にてご覧頂けます。
HEART FILMSはカナダの壮大で綺麗な景色の中でのスノーボード、スキーのライディング、そしてこのロードトリップやそれぞれの想いが伝わる作品。
HYWODは国内のパウダーからパーク、様々なジャンルのスノーボードを見る事が出来ます。ぜひ手に取りご覧になってください。

Heart Films “The Doors” 予告編はこちら

 

http://www.heartfilms.com
https://www.facebook.com/heartfilms
https://www.facebook.com/hywod


彼独自の目線から綴られるコンテンツが特設サイトにて定期的に公開されています

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