Road of “THE DAY” 谷口貴裕&林 孝紀が当てたシーズン最高の1日

晴れ渡る青空にノートラックの斜面、そして最高な仲間。全ての条件がパーフェクトに揃った1日それがTHE DAY。先シーズン、ほぼ毎日撮影で山に上がり続けたフォトグラファーGianのTHE DAYは北海道の若手ライダー谷口貴裕(Lib Tech)と林 孝紀(GNU)と撮影した1日だった。これは3日間のショートトリップで経験したTHE DAYのストーリー
Photo&Text: Gian

1_7S5A7033
2月下旬、昔からの仲間で雪上でも街中でもセッションを重ねてきている谷口貴裕(Lib Tech)、林 孝紀(GNU)を誘ってBCの撮影に行くことに。声をかけたらちょうど2人の予定もバッチリ空いててグッドタイミングだった。普段はコンペティションを中心に活動している彼らだが、2人とも北海道生まれだけあってナチュラルのスキルもレベルが高い。孝紀は僕とタメで谷口君は高校の1つ上の先輩。同世代での撮影トリップだ。
太陽光、僕らがいくら望もうと思い通りにならないその光の具合が撮影にとって重要な要素。北海道のハイシーズンはハンパじゃない雪の量と反比例するかのように晴れの日は少ない。毎晩、こまめに天気予報をチェックし太陽が出る場所とタイミングを見極めるのがフォトグラファーの日課。今回僕ら3人に用意された日数はわずか3日だ。この限られた日数で絶対に良いものを残す。僕もライダーもいつになく気合が入っていた。
2_7S5A5109
初日の天気予報は全道的に雪。前日の予報では午後から曇りになるらしい。話し合いの末、選んだ目的地は道央北部エリア。スポットに到着し、コンディションを確認すると暖冬と標高の低さが相まって南斜面は雪崩れているところが多い。狙いは雪が良さそうな北斜面での撮影にシフト。ハイクアップを終え雪の状態を確かめるべくドロップ、雪は軽くフワフワのパウダーだ。だが、光も弱くTHE DAYと呼ぶには程遠い。谷口君はスイッチでもパウダーを自由自在に滑りおりる。ウォーミングアップといわんばかりの早さで、スイッチバックサイドの気持ちいいパウダーを巻き上げ滑り降りていった。

Rider: Takahiro Taniguchi
Rider: Takahiro Taniguchi

孝典がチョイスしたのはタイトなジャンプライン。 普段はどこか抜けている孝典もスノーボードを履くと一変、難しいランディングもブレずに立ってくる。天気は曇りだったが2人とも全開アグレッシブだ。1日中山の中にいると体はクタクタ、しかし僕たちに残された時間は短い。思い出に浸ることなく、次の目的地へと車を走らせた。

Rider: Takanori Hayashi
Rider: Takanori Hayashi

2日目も、やはり全道的に雪予報、15時からの天気の回復を信じ道央南部エリアで撮影することに。撮影スポットに選んだ場所は、風が当たりやすく時折の突風はかなりの強さで吹いてくる。北海道の真冬はもちろん氷点下、その中で強風にさらされると一気に体温を奪われる。そんな中での光り待ちはただただ過酷。ライダーは体が硬くならないように気を使う。時間と寒さとの勝負だ。

Rider: Takahiro Taniguchi
Rider: Takahiro Taniguchi
Rider: Takanori Hayashi
Rider: Takanori Hayashi

午後になり予報通り天気が落ち着いてきた。太陽光が徐々に落ち着き、雪がオレンジ色にほんのり染まる。ベストなタイミングで撮影しようと瞬間に、太陽に大きな雲がかかった。陽が沈むか雲が抜けるか、際どい時間帯。じれったい時間を待って雲が抜けた瞬間には、太陽はすでに沈んでしまっていた。そううまくはいかないもの。自然相手ゆえに天気に遊ばれることは日常茶飯事。端からみたら氷点下の中での我慢や太陽光とのせめぎ合いなど大変な話ばかりに聞こえるかもしれない。だが、こちら道産子の集まり、そんなんは慣れたもんで撮影中の空気はいたって緩め。孝典が時折見せる空中分解後の胴体着地や道中で川に落ちる天然っぷりと笑いは絶えない。

7_7S5A7673
僕らに残された撮影最終日待ちに待った晴れ予報。最高のロケーションを求めて一路、道北の上富良野町まで移動してきた。この町は十勝岳連峰、夕張山地に囲まれたエリアで北海道の中でも絶景が見られる場所。撮影の朝は早い。5時に起きて準備を整える。朝の山は山頂に霧がかかり、全貌が見えない。どこか神秘的なその姿に目を奪われる。「風の流れで日中には山の雲は抜けてくれそう。」誰かがポツリと言った一言に胸が高鳴る。雲の中、ハイクを始める。白い息を吐きながら1歩1歩新雪を踏みしめていく。次第に雲は抜け、いままで見えていなかった山が姿を表す。何度見ても飽きないこの景色があるから辛いハイクアップも乗り越えられるのだ。
8_7S5A7960
ノートラックの斜面を見て、どのラインを行くか考える。ハイクアップで鼓動が高まると同時に気持ちも高まってくる。1本目は孝典のターン。絶妙な太陽光が差し込み綺麗なスプレーが舞い上がる。シャッターを切りながら自分も高揚する。ボトムまで滑り降りれば、雄叫び&ハイファイブ。

Rider: Takanori Hayashi
Rider: Takanori Hayashi

最高の1本は数日間の疲れを一瞬で忘れさせてくれる。谷口君はクリフをスタイルの入ったテイルグラブでさらりと決める。天気、スタイルとバッチリ決まったこの1枚の写真には引き込まれる魅力がある。

Rider: Takahiro Taniguchi
Rider: Takahiro Taniguchi

シャッターを切るたびに青空の綺麗な写真が出来上がる。存分に滑り倒した後、夕日をバックに下山する。山で見る夕日と街で見る夕日は比べ物にならないくらい綺麗だ。ハイファイブからの疲れを癒しに温泉へ。気づけば3日間の総移動距離は600km、ハイクの疲労もマイナス20度の寒さも最高の1日はそれを全て吹き飛ばしてくれる。それがTHE DAY
11_7S5A8433

フォトグラファー Gian PROFILE
北海道美深町。小学生の頃、仲のいい友達に誘われたのがキッカケでスノーボードの世界に足を踏み入れる。隣町出身のプロスノーボーダー鈴木 伯に憧れ名寄の高校に進学、そこで運命の出会いか現Mountain Jackのクルーと出会う。高校入学初日に「お前見た目がジャイアンだわ」のひとことでアダ名がジャイアンに。昔からMountain Jackをはじめとしたライダーと一緒に滑っていたこともあり、ライダーのケアが出来たらと理学療法士の資格を取得。冬は北海道札幌ベースでカメラ片手に動きまくっている。