A man of Spirit: 谷部勝彦インタビュー

現在スキー場にはたくさんのパークがあり、様々な人がプロデュース、メンテナンスをしているが、パークというゲレンデを造る職人が居るからこそ、その一日を楽しく、忘れられない一日とする事ができる。

Area51sは日本の重要なイベントでも活躍している。谷部勝彦は広くやべっきーという名前で慕われ、Area51sの社長そして日々忙しく動き回っている。
優しい対応、そしてきっちりと仕事をこなす彼の事を信頼している人も多いのではないだろうか?
彼が作り上げるパークには美しく、楽しく、安全であることで有名でもあり、それは様々な日本の大きいイベントに彼が関わっている事でも証明できるだろう。
パークというゲレンデ、それだけの事を一年中考えながら費やしている谷部勝彦にストレートな想いを聞く事ができた。

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He built a park in Yuyang, China

谷部さんは現在Area51sで様々なパークやイベントでのアイテム、コース作りを行っていますが、今迄どのようなコース、イベントに携わってきたのですか?

石打丸山でのNIPPON OPEN, X-trail Jam in Tokyodome、アルツでのSLOPESTYLE、ゼロから作り上げたアースリートフェスタ、BURTON RAIL DAYS, 雪番長SLOPESTYLE、雪番長パークの飯綱リゾート、Yeti、尾瀬戸倉、アルツ、苗場にあったBlue Windy Park、上国でのTHESLOPE、戸倉でのAirMIX、初年度のBillabong Attack、パットと一緒に作り上げたコアXゲーム、FreeSkiingOPEN、海外で言うとKUMIYAMAであったり中国のユーヤンスキー場、韓国のOak Valleyスキー場等様々なイベントやスキー場に関わってきました。

ちなみにArea51sは今年で11年目を迎えますが、プロスノーボーダーが自ら圧雪車に乗ってパークやパイプを作り運営する法人としては日本ではArea51sが元祖なんです。

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@2013 BURTON Raildays.  SPT and Area51s Crew.

パーク作成について、谷部さんが目指す造形物の作り方、安全性、メンテナンスについてどのように考えていますか?

造る側の立場からあえて言うと、パークって言われるものについての僕のテーマは「パークを滑る人と、普通に滑走している人」と共存できる様に造りたいと思っています。山全体を繋げて滑れるようにしたいです。パークに来ました、スタートエリアで待ってジャンプ飛んで、とかではない一つの流れるような形ですね。山頂からベースまでアイテムが点在しててフリーライディングをしている中でジャンプやレールやBOXをトライできるようなイメージです。

例えばパークをやる彼氏と普通に滑る彼女が一緒に滑る事ができるパークです。もちろん親子でも、おじいちゃんと孫でも、誰でも一緒に滑る事ができるんです。そういうパークを目指したいです。そしてそういうアイディアに賛同してくれるスキー場さんやオーナーさんに出会いたいな、と思っています。

作り方は一言で言うと「見た目のバランス」、これにつきます。バランスがいいというのは安心という事につながります。例えばジャンプ台の角度と、ランディングの角度が綺麗にあっていることもバランスの良さの一部にもなっています。だから海外の有名ディガークルーや僕達が造るのもそうですが、よく「綺麗だね」と言われる事が多いんです。
スノーボードというのはリズムのスポーツでもあるから、そこまでしっかりやっていないと「なんか違和感あるな」とか「なんか右向いてて恐怖感が出てくるな」という感じで滑りが崩れてくるわけです。それは結果的に安全ではなく最大限楽しめていないんです。

安全性に関しては飛び出しの角度とランディングの角度を必ず微調節しています。、実際の飛ぶ高さに関係なく、ランディングの衝撃=ストンプ(垂直に降りる高さ)を20cm未満に抑えるようにしています。 でもうちのディガーには20cm未満がOKというわけではなく、常に100%(0cm)を目指しなさいと伝えています。

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everyone trust his skill. of corse he does good job as always. @Yuyang, China

メンテナンスは継続性という意味で常に同じ形での提供を行う事が大事だと考えています。弊社では雪の日も雨の日も風の日も、難しいけどどんな天気でも必ずOPENして滑れるようにこころがけています。

結果、基本的にパーククローズしている日は今まで無いです。もちろんアイテムが壊れちゃったとかは別ですが。

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His jobs are always clean and beautiful.

プロフェッショナルとしてパーク作成をしているArea51sですが、更に目指している何かはありますか?

やっている以上は表向きにはやっぱりAsiaナンバー1です。実績を見てもらえれば現状そうなのかもしれません。ただ、同業者がやっぱりArea51sがナンバー1だね、というのではなくて、普通にパッと聞いた時に「Area51sだよね」と言われる様になりたいです。
でも根底に帰ればスノーボード業界が良くなって欲しいと思って始めた仕事ですから、最終的にはお客さん、関係地域、ゲレンデ、業界関係各社への貢献と必要とされる業態を目指していきます。

もちろん、仲間もどんどん増やしたいです。でも、作る専門に修行しているPROがあまりいないので、そこが残念です。
どういうことか、料理のPROで説明すると、長年料理の修行をしてからPROとして料理を出すコックさん。食べることが好きなだけで見よう見まねで作った料理を出すコックさん。知識の厚みや経験値によって安心して何でも調理してもらえるのは前者ですよね。
パークプロデューサーも同じ。

ゲレンデ改革に必要なノウハウは作るのが上手であったり、滑るのが上手であったりすることではないですから。

さらには、ゲレンデを運営している方にもこのことをもっと知っていただきたいです。
やっぱり怖いのが、PROスノーボーダーに任せる→一般人が入らない、怪我が多い→やっぱり自分たちで作る→大変、やはり怪我が多い→手を抜く、さらに怪我人が増え人が来なくなる→やることやったしもうパークはいらない→さらに人が来なくなる→閉鎖
負のスパイラルはこのパターンに限りませんが、あてはまるゲレンデさんも少なくないと思います。

だから最低限自分が思っているような事を同じようにできるパートナーの輪をつくっていきたいとも思っていますし、パークディガーの協会のようなものが欲しいと考えています。

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His vision is simple. better ski field, better park.

雪山に常にいる立場として仕事と家庭とのバランスはどのようにしていますか?

やっぱり誰でもそうなんだと思いますが家族が一番です。でも仕事に常にとらわれてしまっています。変なトラウマが自分の中にあるんです。家族と一緒に居られない仕事はしちゃいけない、みたいなものが。
「家族を連れてきていいですか?」と言って「駄目です」と言われるような能力しか自分にはないのであればその仕事自体をやらない方がいいと思ってしまいます。だから常にできるだけ一緒に居られるような場所、仕事の仕方を追求しています。同じ事なんですがそれが自分がしたい仕事なんだと思います。だから家族が一緒にいられる時間には限りがあるからその時間を作る為の努力は惜しみません。
もちろん、何でもかんでも「いっしょがいい」とかってわがままってことではないですよ(笑

海外にも一緒に行っていますが、行く直前には「やっぱりお金もかかるし、子供が高山病にかかったら怖いな」とか「一人でのびのび仕事をして帰ってくればその分お金も浮くんじゃないか?」って思ったりしました。
でも「のびのび仕事をするってこういう事なのかな?」と感じたりもしました。でも自分ののびのびしながら仕事をする時って大体自分が荒んでいるときだから(笑
だから結果一緒に行って改めて家族の良さを理解させてもらえたりしましたね。

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His mind is always with his family. you can tell from this photo. Wanaka, New Zealand.

Words

あえてスキー場の皆さんに向けて言いたいことがあります。
専用の職人が居る事も知って頂きたいです。例えば、現役プロスノーボーダーはプロスノーボーダーで、圧雪のオペレーターは圧雪のオペレーターです。パークというゲレンデを造る、それだけの事を一年中考えて費やしている職人を上手く利用してもらいたいと思います。

ゲレンデを楽しいパークにしたい、楽しみに滑りにくるプレーヤーに心から楽しんでもらいたい、そしてプレーヤーのリピートが増えて、結果そのゲレンデのファンになってもらえるようになって欲しいですし、パークというものはコアなものではなく、PARK=公園だと僕は考えています。

そしてプレーヤーのみなさんには、「滑る側の人達もしっかり選んで欲しい」という大事な事を伝えたいですね。変な言い方かもしれませんが、よく知らずにパークに入って怪我させられてしまうことだってありますから。皆さんの時間、体はお金に代えがたいものです。高い買い物をするときと同じで、パークに対しても多面的に調べて吟味する癖をつけることも大事なのではないでしょうか。
是非、しっかりと意識して楽しい趣味をいつまでも続けて欲しいと思います。

僕の作るパークで最高のパフォーマンスを見せてくださいね。

如何だったろうか?

みなさんが何気なく滑っているパークの一つ一つのアイテムを見ればどのような思いで作られているか、どのようにスキー場が考えてサービス&フィールドを提供しているのかがわかってくるはず。
パークがあればいい、それで充分だ、と思うスキー場はそれなりのパークしか提供されず、結果対価として支払うリフト券を最大限活用できずに皆さんの大事な一日を終えてしまうより、真剣に滑る人達の事を考えて作られるパークで滑る方が絶対に満足いく、安全で楽しい一日を過ごせるのではないだろうか?

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Interviewed and edit by
Credit_Kazu

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