HIKE & RIDE vol.1 長野・千畳敷カール

春の訪れと共に雪がスキーリゾートからなくなり、日本各地のゲレンデがクローズしていく頃、INDRES FORMATIONクルーの残雪トリップがはじまる。今回のストーリーは、4月下旬~5月下旬の期間限定でTバーリフトが併設されるゲレンデが姿を現し、多くのバックカントリースキー&スノーボード愛好者が足繁く通う日本有数の登山スポットとしても有名な長野県駒ケ根市に位置する「千畳敷カール」。
今回のコラムはフォトグラファー中西隆裕氏の写真と共に、歩行困難とも言われた大怪我から不撓不屈の精神で復帰を目指すプロスノーボーダー藤沼到のテキストで送る。
Photo: Takahiro Nakanishi
Text: Itaru Fujinuma

Special Thanks: 中央アルプス観光株式会社

世間は間もなくゴールデンウィーク、連休中はどこで何をして過ごそうか?と世間がにわかにざわめきたつ頃、大抵その連絡は僕の下にやってくる。「到ちゃん!タクミ(池上匠)、シューヘイ(杉浦宗平)、アンティ(浜崎あゆみ)、ユータ(宮澤裕太、駒ヶ根ローカルスキーヤー)達を誘って千畳敷へ登りましょう!中西君(Takahiro Nakanishi)、タカッチ君(フィルマーとして参加、高山宗規)、ピロ君(フィルマーとして参加、小林公洋)にも合流してもらって撮影しましょう!」電話の声の主はスノーボードムービープロダクション「INDRES FORMATION」をはじめて今年で10年になる中根篤史監督。

中根監督について少々書かせていただくと、もともと白馬エリアやカムイ龍ヶ崎などで通年雪を追い求めていた過去を持つフリースタイルスノーボーダーで、近年はフィルマーとして、エディターとして、プロデューサーとして、双子の弟でありディレクターの中根寛史氏等と共にINDRESを運営する夏山登山もこなすフットワークの軽さと巧みな話術で事を円滑に運ぶ事が得意なスノーボード大好きお兄さんである。

そんなお兄さんからの誘いに、目指した長野県駒ヶ根インターから車でおよそ5分。早朝にもかかわらず、僕等が集合した菅の台バスセンターには大勢の登山客がその日のバス運行開始を待っていた。

バスに乗り込む人の装備から察するに、その大半が登山客で、それより少ない割合でスキーヤーとスノーボーダー。その中にもう少し少なくなるがバックカントリーでの滑走を楽しむであろう人々の姿が見受けられた。もちろん私服姿で純粋に観光を楽しむ事が目的の方々もみられた。

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バス停の前にある中央アルプス観光株式会社の皆さんに挨拶を済ませて僕等はバスに乗り込んだ。この過程で乗り物酔いしやすい自分はおよそ30分間、たいてい瞳を閉じることに…
目を開けるとそこは標高1662メートルの位置にある駒ヶ岳ロープウェイしらび平駅。ここからロープウェイに乗り込み7分半の空中散歩を楽しむ。トップシーズンの降雪量によって春の残雪の量は違えど、例年ここから眼下に広がる景色がどんどん雪景色に変わりはじめ、千畳敷カールへ向かうロープウェイ内の人々全員の気持ちが高揚していくのがわかる。

千畳敷駅に到着するとそこは2612メートル、辺り一面白銀の世界。日本全国、多くのゲレンデから雪が姿を消してから数週間は経とうという時期に、信じられないような美しい白の世界が、訪れる人々を待ち受けている。トリップ中時間に余裕のある方には是非利用していただきたいのがロープウェイ終着駅となる日本一高い位置にある駅「千畳敷駅」に併設された、日本で一番空に近いホテル「ホテル千畳敷」。

山の上では自らの行動予定とそこに費やす時間を予測して、余裕のある動きをすることが安全確保につながるセオリーとなるが、日帰りでできる行動には時間的にも体力的にもどうしても限度がある。

山の上に宿泊する事により、朝一のロープウェイが千畳敷駅に到着する前に、さらにはバスの始発よりもはやくから行動する事ができるのだ。(早朝は気温が低く、パックされた雪面は氷のように硬いことがほとんどです。当然ハイクアップ中の滑落の危険性も高くなります。装備や経験、天候や体調をふくめた全てのコンディション調整など、安全面への配慮が充分に必要です。)

Ayumi Hamazaki, Itaru Fujinuma, Yuta Miyazawa, Atsushi Nakane, Piro
Ayumi Hamazaki, Itaru Fujinuma, Yuta Miyazawa, Atsushi Nakane, Piro

運が良ければ下界では決して拝む事ができない、美しい朝日や眼下に広がる雲海を眺めながらの登山や滑走が可能なのである。
(僕は朝日を浴びての滑走シーンを撮影するために、日の出の時刻を狙い早朝4時から極楽平を目指してハイクアップ。しかし日の出の時刻の空は、残念ながら低い雲に覆われており朝日ライディングの夢は叶いませんでした…。誰だ?日頃の行いが悪いのは?笑)

もちろんホテル内では日帰りの方でも利用可能なレストランがあり、駒ヶ根名物のソースカツ丼やその他さまざまな絶品料理を楽しめる。
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撮影時にお世話になった佐々木料理長からは、標高が高いので沸点が低くなるため、お湯の温度が上がらずに調理をするのが難しいとお聞きした。
しかし我々インダレスクルーが宿泊時にいただいた料理の数々は、そこが標高2612メートルに位置するホテルであることを忘れてしまうほどハイクオリティなコース料理であった。
長年研究を重ねた熟練の技術を持った調理人達によって生み出された、最高のおもてなしに感動する事ができた。
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ホテルの目の前には4月下旬~5月下旬(残雪量によってクローズ時期が変動)の期間中ティバーリフトが設置され、コブ斜面やバンクドスラロームコースのようになった地形等で、ビギナーからエキスパートまで様々なレベルのスキーヤーやスノーボーダーが残雪ライディングを楽しんでいた。
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毎年千畳敷での滞在中は感動の連続だった。絶えず目に飛び込んでくる非日常的な景色が心を震わせてくれる。
駒ヶ根市を覆うように眼下に広がる雲海。

美しい遠くの山々。
今もなお静かに活動を続ける御嶽山での出来事を僕たちは忘れてはならない
早朝遥か彼方に姿を現した圧倒的な存在感を放つ富士山。

ホテルから眺めた星空は夜が暗闇と共に訪れる事を忘れさせるほど明るかった。
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さらに星空と共に暗闇を明るく照らしていた駒ヶ根市の夜景。

バスとロープウェイを乗り継ぎ、通常のスニーカーに私服姿での観光も充分に楽しめる千畳敷ですが、バックカントリーライディングに挑戦する場合は入山届けを出してアイゼン、ピッケル、行動食、水分等々の通常登山で必要になるアイテムにプラスして、ビーコン、スコップ、プローブ等、有事の際に備え十分な装備を用意して臨みましょう。

Itaru Fujinuma
Itaru Fujinuma

いつ訪れてもそこには最高のロケーションが待ってくれている。ハイクアップしている時間と滑走の時間では、極端に短い滑走時間。ライダーは貴重な一本に集中し、全力で楽しむ。脳内には興奮物質や喜び物質が出ているのであろうか。ノルアドレナリン?ドーパミン?セロトニン?βエンドルフィン?
振り返って己のラインを確認する時に、ようやく気が付く。激しく息切れしている自分に。

Itaru Fujinuma
Itaru Fujinuma

 

Itaru Fujinuma
Itaru Fujinuma

僕等が過ごした濃厚過ぎる残雪トリップのことを語り出すと、時間が幾らあっても足りない。
昨年3月、招待選手として出場していたガーラ湯沢AIRMIX SUPER SESSION2015での競技中に負った、歩行困難とまで言われた大事故から一年半弱の時間が経過した現在の近況は…また別の機会に報告したいと思う。

Itaru Fujinuma, Atsushi Nakane
Itaru Fujinuma, Atsushi Nakane
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