日本一の草大会「TENJIN BANKED SLALOM 2021」から見えてくる新たな刺激。

Text & Photo: Gaisu

今年で11回目の開催となる「TENJIN BANKED SLALOM 2021」が、去る3/6(土)~7(日)にかけて谷川岳・天神平スキー場で開催された。
記録的な暖冬に見舞われた昨シーズンに比べ、シーズン序盤から豊富な積雪に恵まれた今シーズン。各エリアの滑り手たちはベストコンディションのフィールドを滑り込んでいるはずなだけに、今大会に向けた意気込みは今までと違ったはずだ。まさにシーズンの総決算とも言える自分の滑走技術を試す大きな節目となる舞台がこの大会となる。
昨年に続きコロナ禍での開催ということで、安心安全に大会を運営するため新たなイベントのガイドラインが設けられ、選手やスタッフの事前健康観察アンケートの提出、また受付方法やチケット購入に到るまで蜜を避ける徹底したコロナの感染予防対策が講じられての開催となった。

受付での密を避けるため今年は事前にビブナンバーがSNSで公開され、当日はスムーズなエントリー
無事にイベントを開催できるよう行われた安全祈願

イベントプロデューサー福島大造氏による大会説明
今年はアイスバーンの影響でハードな作業だったというコース造成。ディガーのみなさん本当にお疲れ様です

参加者たちはこれらのスムーズなエントリーを終えロープウェイを登ると、全国から集まった掘り手たちによって造り上げられた素晴らしいコースが目の前に現れる。大会初日、時より降る雨とガスによって生憎のコンディションの中コースインスペクションを終え予選スタートとなったが、参加者は翌日の決勝へ進むためにモチベーションを上げ、本番の滑走1本に集中していく。自分の出走順を見ながら、時間帯によって刻一刻と変化するコース状況を読みつつ、すでに滑走した人の情報を聞いたりと滑りのイメージを膨らませていく。そしていざ自分の出走になれば全ての力をその1本にかける。翌日の決勝へ行けるかどうかはその滑り次第となり、全クラス滑走タイムの上位半数が決勝へと駒を進めていった。

第一滑走者は、GM MEN(over50)クラスの西田洋介(MOUNT TANIGAWA HARD CORE)
GREEN CLOTHING 田口勝郎
ZIMBABWE 谷澤 智
RIDE surf and sports 柴田浩次

大会の合間に、POW JAPAN代表理事の小松吾郎氏からPOWの活動についてのメッセージがおくられた

翌日は見事な快晴に恵まれた会場。コース下にはブランドのテントブースが並び、来期プロダクトの試乗会や展示なども行われている。レースの合間に気になるボードを試乗したり、本番前に自分のボードにワックアップしたりと、それぞれが感染予防対策を意識しながら仲間や家族と思い思いの時間を過ごしていた。様々な制限がある昨今なだけに、こうして大自然の雪山の中にいられることは幸せなんだと、あらためてスノーボードをしていて良かったと感じる。

丸山隼人
山崎恵太
中村俊啓
増田塁揮
長谷川 篤

決勝は、1人2本のベストタイムで順位が競われるため、比較的コースコンディションが安定する1本目に集中する選手が多いように感じられた。
もちろん晴天の中での決勝は盛り上がり、レース終了後はそのまま屋外で表彰式が行われ無事全てのスケジュールが終了した。

MAVERICK FIGURES 三上晃司
阿部亮介
CARDIFF SNOWCRAFT, 686 伊藤潤一
岡本 航
元木康平
川野梨奈
大古場 夕海
REDI代表/ 大会MC 大江 信行

GM MEN(over50) クラス優勝 西田洋介
MASTER WOMENクラス表彰

大会MCの大江信行と上田 豪の2人が、例年のごとくスタイル全開のトークで会場を盛り上げる
OPEN WOMEN優勝 野口海桜
OPEN MEN優勝 元木康平
大信雄一

次世代スノーボーダーたちの成長

11回目の開催となった今大会。この大会がスタートした当時、OPENクラスに出場していた選手たちも、11年以上も経てばひとつ上のクラスであるMASTER MEN(オーバー40歳)や、GM MEN(オーバー50歳)へと年齢を重ねるとともにエントリークラスが変化していく。これは大人だけでなく、子供たちにも同じことが言える。
当時まだ小学生だったキッズが中学生、そして高校生へと着実に成長し毎年それぞれのクラスでドラマが繰り広げられているのだ。そういった次世代を担うスノーボーダーたちのなかでも互いに競争心が芽生え、切磋琢磨しながらお互いの滑走技術を高めあっている。そうしたなかで、まるで大人顔負けのライディングを見せる中学生も多く、さらには高校生でオープンクラスの入賞を果たす強者もいた。今大会もそんな彼らの成長っぷりが印象的だった。

小学生とは思えないほどの乗れてる滑り

またバンクドスラロームは、学校の運動会のように親と子が家族で出場できるのもひとつの魅力。子供が親に声援を送り、親が子供の滑りを映像や写真で記録し成長を見守る。大人から子供たちへとスノーボーディングのリアルなカルチャーや楽しさを繋げていく。このバンクドスラロームにはこうした重要な要素も含まれているのも伝えておきたい。

ゴール裏では参加者によるミニパークが造られ、家族や仲間でセッションが繰り広げられていた

自分を成長させてくれるバンクドスラローム

筆者も今シーズン滑り込んだ証を予選の1本にかけ臨んだが、結果は予選敗退。実際はそう甘くなかった。例年よりも板に乗れている感覚があっただけに、より悔しさが押し寄せる。参加者それぞれに1シーズンのストーリーがあり、この大会にかける想いがある。だからこそ、この悔しさが自分の胸の中に響いてくるのだ。本気で滑るからこそ本気で喜び悔しがる。その自分との向き合いこそが、このバンクドスラロームの醍醐味なのだとあらためて感じた。

人との競争ではなく自分との戦い。スタートからフィニッシュまで、どう自分のライディングに向き合えたかが結果としてタイムに繋がる。セーフティに滑り切るだけではタイムが縮まらない。コースコンディションを読み、スピードを減速せずバンク地形に合わせてベストなライン取りができるかが問われる。まさにフリーライディングの要素が凝縮された大会が、このバンクドスラロームなんだと思う。
筆者も自分の何がダメだったのか…と、今後の課題を考えてみる。来年はもっと不整地も滑り込まなければ…と答えを出してみたり。
やはり滑走技術やターンは想像以上に深く、特にバンクや自然地形を滑れば滑るほど新たな課題が見え、常に自分を成長させてくれる。だからこそスノーボーディングは面白くこの遊びはやめられない。もっと滑り込んで上手くなりたい。そう感じさせてくれた今大会は、自分にとって大きな刺激をもらった貴重な2日間となった。

五十嵐 零
平良 光
加治秀之
勝山尚徳
渡辺大介
佐藤亜耶
大会最後にコース造成に携わったディガーたちによるパレードラン
拳を交わすディガークルーたち

TENJIN BANKED SLALOM 2021 フルムービー


Edit: okaken cinema

2021リザルトはこちら
オフィシャルサイト
オフィシャルFACEBOOK
オフィシャルINSTAGRAM