冬季閉山直前の立山パウダーセッション

毎年11月末日に冬季閉山する立山。そこは12月前にも関わらず極上パウダーが楽しめるとあって、今年も数多くのライダーたちが集まっていた。そのときの模様を長野・白馬にてガイドカンパニー・番亭を主宰する竹尾雄宇にレポートしてもらおう。

Text: Yu Takeo(bamboo tail)/ Photo: Mantaro Muramoto

1週間続いたストームも落ち着き、最高のコンディションを迎えた11月28日。アルパインエリアでのシーズン1発目となる極上パウダーを狙って、多くのライダーやバックカントリー愛好家が集まってきた。この日は、いわゆるTHE DAYだ。20年ほど毎年秋の立山には足を運んでいるが、近年は暖冬の影響もあってか、秋の立山でいいコンディションに恵まれることは本当に少なかった。だけど、今年は、ここまでの好条件が整ったのは記憶にあまりないほどだった。

まさに冬の世界。11月とは思えない!

もともとK2ライダーが集まって撮影する予定だったが、暴風雪が続いた後で雪崩のリスクも高いと感じ、そんな危険を冒してまで撮影するべきではないと判断し、一度は予定をバラしていた。しかし、ストーム後半の雪の降り方を見ていると、「これは……行けるんじゃないか」と思い、前日から白馬入りしていたライダーたちと岡山在住のカメラマン万ちゃん(村本万太郎氏)を誘って立山へ向かうことに。メンバーはK2ライダーの橋本貴興、高井隆司、竹尾雄宇、そしてCARDIFFライダーの森川峰人、若手の番亭ガイド・堂本陵馬。本来なら泊まりで行きたいところだが、急遽だったため日帰りのトリップとなった。

竹尾とハッシーによるハイクアップ前のミーティング風景

秋の立山に日帰りで行くとなると、乗り物の関係で現地での滞在時間は5時間ほどしかない。かぎられた時間のなかで、何ができるかを妄想しながら、電気バス、ケーブルカー、ロープウェー、トロリーバスを乗り継いだ。ようやく到着した標高約2,400mに位置する立山の室堂は、ストーム前とは別世界。あたり一面にノートラックの大斜面が無数に広がる、まさに真冬の世界が広がっていた。景色を見に行くだけでも価値のある絶景だ! さっそく準備をし、ハイクアップしながら雪のコンディションも確認しつつ、どこを滑るかを考えながら標高を上げる。 立山の主峰・雄山付近の稜線3,000mからロングなラインで滑走するつもりだったが、風で雪が飛ばされて氷や岩が露出している箇所も僅かに見え、しっかりと雪が吹き溜まっている立山にしては短めの斜面で撮影することに。

これから滑るラインを想像?妄想?すれば自然と歩みも早くなる
日本とは思えない景色が立山には広がっている

まず、様子見も兼ねて軽く1本。どこを滑ってもシーズン1発目とは思えないハイシーズン並みの軽いパウダーに、ライダー陣のテンションは否が応でもアガっていた。雪崩のリスクが低いことを確信し、2本目はそれぞれのライダーが滑りたい斜面へと歩を進めることに。そして、それぞれが納得できるターンを刻んだところで、早くもタイムアップ。短い時間ではあったが、それぞれがシーズン初のパウダーライドを最大限に楽しみ、しかも撮影ができ、最終バスにギリギリに滑り込んで帰路についた。

狙いに狙って光の射すバンクに突っ込んでスプレーと戯れる高井
森川の何とも心地よさそうなパウダーライディング
美しすぎるハッシーのライン
堂本の舞い上げたスプレーによって生まれた光と影の世界
この日はガイドではなくライダーとしてアグレッシブに撮影に挑んだ竹尾

が、対面から撮影してくれたカメラマンの万ちゃんだけは最終バスの時刻に間に合わず、ひとりでホテル立山に宿泊するというハプニングも(笑)。まぁ、これも今となってはいい思い出。

カメラマンが最終バスに遅れたおかげで残せた夕焼けショット

今季はラニーニャの影響もあり、全国的に12月と1月は雪が多いとウワサされているが、ここ立山も閉山前にその恩恵を感じることができた。こんな素晴らしい日を味わえるから、自然の相手のスノーボードはやめられない。しかも、11月から今シーズン最高のスタートを切ることができた。今季は、どうやら最高のシーズンになりそうな予感。皆さんにとっても最高のシーズンが訪れますように!