モディファイドハーフパイプ採用のUS OPENで頂点を勝ち取った戸塚優斗が目指すもの

今シーズン、12月のカッパーマウンテンで開催されたワールドカップのHP2位でシーズンのスタートを切ると中国、スイス、そしてX-GAMESと続けての2位と表彰台に立ち続け、好調ぶりを見せてきた戸塚優斗。しかし、戸塚のリザルトの上には常にスコッティ・ジェームズがいた。実は戸塚よりも常にいいポイントを叩き出したスコッティになかなか勝つことが出来なかったのだ。そんな、フラストレーションを爆発させるように1982年より伝統的に続く、世界で最も歴史あるスノーボードコンペティション「THE 2020 BURTON US OPEN SNOWBOARD-ING CHAMPIONSHIPS」ではスコッティ・ジェームズら強豪が集まる中で戸塚は会心の滑りを見せ、念願の頂点を極めた。
平昌オリンピックHPの決勝で攻めにいった2本目、ファーストヒットで特大サイズのFSダブルコーク1440を放った後の着地ミスでの負傷からの復帰以降、着実に進化を遂げてきた戸塚優斗。その進化はスノーボードのテクニックだけではなく、スタイルや精神的な面でも明らかに感じられるようになっている。
そんななか今年のUS OPENではモディファイド(改造)ハーフパイプが採用され、前半モディファイドのセクションではよりスタイルが重要視される演技が求められたこともあり、戸塚自身もこの優勝にはワールドカップでの勝利とは異なる別の喜びを感じている様子。
その胸のうちを多数のTV局やメディアに囲まれ優勝報告記者会見に臨んだ直後の戸塚に聞いてみた。

戸塚優斗 使用ボード: YONEX REV®︎

Q
US OPEN優勝おめでとう。ライバルは沢山いると思うけど、今シーズンずっとスコッティ・ジェームズに目の前で優勝を続けられてきて、やはり彼の強さはすごく感じていたのかな?
A
そうですね、今のスコッティは強いですね。なかなか勝てなかった。スイッチ・バックサイド・ダブルコーク1260とか誰もやってないことをやってるし、それを高く評価されてるってところですね。しかもドカーンっと飛んで回ってという感じで彼はとてもダイナミックに見えますよね。

Q
それに対してどんな気持ちで勝負してきたのかな?
A
やりたいことはいっぱいあるんですよ。ですけど、実戦でそれをなかなか出せてない。例えばそれをやったらポイントが出ないんじゃないかという不安があるんです。自分としてはもっとスタイルを出すということにこだわっていきたいところなんですが、そのスタイルもまだまだ磨きが足りないから、中途半端で出していってもいい結果は出ないと思うんです。

Q
でも、最近の戸塚くんのスタイルはだいぶ進化してるよね。グラブのスタイルひとつ見ても以前とは違う。
A
そこはだいぶ自分でも力を入れて練習してきています。僕は片山来夢くんのスタイルってカッコいいって思っていて結構参考にしています。去年のUSオープンの巨大なメソッドもカッコ良かった。ホントにああいう風にスタイル出せるのがいいって思うんです。

1発目に放つFSダブルコーク1440はコケる不安はないと完成度には自信があると語る。2020 US OPEN ©️Burton
戸塚優斗が語った片山来夢の2019年US OPENのファーストヒットで放った特大メソッド。圧巻の高さとスタイル ©️Burton

Q
でも、戸塚くんの1発目のFSダブルコーク1440は、今や天下の宝刀みたいな鋭い決め技になって来てるんじゃない。
A
FSダブルコーク1440は、もう最近当たり前のように打ってるんで、もうコケるっていう気がしないですね。自信を持って安定して打ててます。

Q
今回のFSダブルコーク1440〜キャブダブルコーク1260〜スイッチBSダブルコーク1080は、初めて繋いだの?
A
そうですね。X-GAMEの時にキャブダブルコーク1260〜スイッチBSダブルコーク1080って繋いで、カッパーマウンテンのワールドカップの時にFSダブルコーク1440〜キャブダブルコーク1260と繋いで、このUSオープンで初めて3つ繋いだって感じです。モディファイドなんで後半の3発が勝負っていうのはありましたから、攻めていきました。

Q
キャブダブルコーク1260〜スイッチBSダブルコーク1080の繋ぎはすごく難しいのかな?
A
ええ、すごく難しい。まだそんなに打ってるわけでもなく、完成度もそれほど高くない。だから決勝の時もめちゃくちゃ不安だったんですよ。着地もギリギリでしたし。あの時はパイプの壁も陽が当たって柔らかくなっていたんです。まだ、慣れていないので抜ける時にあまり蹴れなくて、飛び出しちゃうんじゃないかって不安もあって怖くて切りあがったら何とか帰ってきたっていう感じでした。そこは、気合いですね(笑)

Q
今回モディファイドのハーフパイプが採用されたけど、原点回帰みたいにスタイルをもっと出せるセクションを取り入れた形でハーフパイプが評価されていくっていう流れが出てきたことについては、戸塚くんにとってはどう?
A
いや、めちゃくちゃ楽しいですね。他の選手たちのいろんなスタイルも見れる。自分でもいろいろ試していきたいし「あそこで何をやろうか?」とか、考えるのが一番楽しいかな。来夢くんとかと「あれ、出来るんじゃない?」とかいろいろ話をして盛り上がりますね。

Q
今回のモディファイドでのマックツイストとかは、だいぶ前からやろうって決めてたの?
A
本番前の公開練習の時です。何やろうか悩んでて。予選の時に点数が伸びなくて、回転方向が同じスピンだからというコーチからの指摘もあって、ルーティーン決めました。でも、その後のバックサイドアーリー540が計算違いで飛びすぎて際までいってて、焦りましたけど(笑)。

記者会見中も、インタビューでも戸塚優斗は、大会で勝つことは目指しながらも、スノーボーダーとしてもカッコいいライダーと認められるようになりたいという思いを言葉にしてた。やりたい技はあるけど評価されるまでのスタイルでないから出せない。それをもっと表舞台で出せるように自分を磨きたいという。US OPENという歴史のある大会、そしてモディファイドが採用されたハーフパイプで得た優勝は、戸塚にとってとても大きな成果であることは間違いない。
まだまだ大きく進化していく過程にありながらも、周囲からいい刺激も受けながら、日本を代表するスノーボーダーとして、さらにそのスタイルは磨かれていくのだろうと感じた。今後も戸塚優斗の成長ぶりに期待していきたい。

YONEXの代表取締役会長の米山勉氏より、活躍を祝して花束が贈られた

戸塚優斗 YUTO TOTSUKA
2001年9月27日生まれ、神奈川県出身
<2019-2020シーズンRESULTS>
2019 FIS World Cup Mammoth Mountain HP 優勝
2019 FIS World Cup Copper Mountain HP 2位
2019 FIS World Cup Secret Garden HP 2位
2020 FIS World Cup Laax HP 2位
2020 X Games Aspen HP 2位
2020 FIS World Cup Mammoth Mountain HP 優勝
2020 Dew Tour HP 2位
2020 US Open HP 優勝
2019/2020シーズン W杯︎種目別総合2位