ブルー・モンゴメリー氏インタビュー 「限界を作らずに未来へとスノーボーディングを守っていく」<後編>

E_E5A5669CAPiTAが産声を上げたのは2000年。創始者であるブルー・モンゴメリーが住むウェストシアトルのガレージから初まった。当時彼は26歳。スノーボーダーによるスノーボーダーの為のブランドを16年の年月をかけ作り上げてきた。そして、昨年11月、遂に長年の夢であった自社工場マザーシップをオーストリアに誕生させた。今後のスノーボードカルチャーを牽引していくブランドCAPiTAが考える未来のスノーボーディングの形とは果たして何なのだろうか。

フリーラン(以下、F):話はすこし変わりますが、初めてCAPiTAを手にした人が居るとする。その人にはどんなスノーボーダーになって欲しいですか?

ブルー・モンゴメリー(以下、B):特に“こうなって欲しい”とかは無いよ。純粋に山で最高の時間を過ごして、一瞬一瞬を楽しんでもらいたいね。その中でオレ達がクリエイトしたものからインスピレーションを感じてくれたら嬉しいし、同時にクリエイティブにもなってくれたら最高だよね。でもとにかく、スノーボードを通して自然と遊ぶ感覚を味わって欲しいね。そしてなによりもスノーボーディングを愛して欲しい。それだけさ。

F:冬以外のシーズンにCAPiTAが製品をリリースする予定はありますか?例えばキャンピングギアとか?

B:それは考えてないね。今の時点で、オレ達の仕事は自分たちがもつ全てのパワーを世界最高のスノーボードを生み出す事にフォーカスする事だと考えている。だから他の製品にフォーカスする気は全く無いよ。

F:日本のスノーボードシーンについてはどう思いますか?

B:日本のスノーボードシーンからは大きな影響をうけているよ。世界的に見て日本のスノーボードシーンはリーダー的な存在になっていると思う。クリエイティブな考え方、特にパウダーライディングに対する取り組み方や考え方はとてもソウルフルだよね。そのパワフルでソウルフルなスノーボーディングは今、世界の様々な場所で受け止められている。世界中のスノーボーダーが日本のパウダーを夢見てる。同時に世界的レベルのフリースタイルライダーも急成長をみせている。アユムやユウキを始めとした若手のアップカマー達は世界的に見てもズバ抜けたレベルのアスリートだよ。スノーボーディングの進化とパウダーライディングの本質。その2つが同時進行で成長しているのが日本のスノーボードシーン。最高にクールだと思わないか?

F:自分もそんなシーンに居られるなんてラッキーだと思います。しってますか?親が子供にさせたいウィンタースポーツのナンバーワンはスノーボーディングらしいんです。

B:いいね、ヤバいねそれ。

F:アユムやユウキの影響が大きいみたいです。で、第二位がフィギュアスケート!

B:Oh NO! マジか?笑

F:フィギュアスケートも日本では人気ありますからね。

B:でもいい事だよな。オレはキッズ達が少しでもテクノロジーからプラグを抜いてくれたらいいと思ってる。そして自然にプラグインしてくれると最高だよ。彼らが完全にテクノロジーから離れることは不可能だと思ってる。でも、仲間と山で楽しい時間を過ごして、リアルな会話をすること。携帯やSNSでの会話じゃなく、本当のハイファイブを交わして、リアルな人間関係を築いてほしい。オレはアンチ・テクノロジーじゃないけど、自然の中にはそれだけでは理解できないパワフルな魔力が宿ってる。スノーボーディングがその力を与えてくれると信じているし、CAPiTAのゴールはそこにあると思う。CAPiTAがキッズ達にとって、自然と繋がる為のツールになり、仲間と最高の時間を過ごすきっかけを与えられるなら、それが一番の喜びだよね。

F:ブルー本人もパパになった事で、その意識もかわりましたか?

B:うーーーん、そうだな。かもな。今本当の父親ではあるけど、そのずっと前からオレはCAPiTAの父親でもあったからね。そのなかでいつもチームやキッズ達の事を一番に考えていたんだ。彼らがどんな人生を送り、どんな人間になっていくのかを見てきた。で、いま実際父親になってみるとスノーボーディングの未来をより深く考えるようになったよ。オレが子供の頃そうだったように、自分の娘にも自然と戯れて育つことを願ってる。キャンプでも釣りでもなんでもいいんだ。(スマートフォンをいじる仕草をしながら)こうやって小さな画面の世界ばかりを気にしてる人間にならないように。

F:そのアイデアが今回新しく立ち上がったマザーシップにも関係しているんですか?

B:その通りだね。スノーボードを生産する上で、地球に対するインパクトを第一に考える事が責任のあるスノーボード造りだと思ってるからね。スノーボーディングの楽しみは、環境の事を考える事でもあるって気がついたからね。でも「環境にやさしい」とか「グリーン」とか、カギとなるようなマーケティング・ワードはあるけれど、オレ達にとってそこは重要じゃない。それがCAPiTAのマーケティングの基盤になることはないんだよ。オレ達は「グリーン・カンパニー」じゃない。オレ達はただ、地球環境を考えるスノーボードブランドだって事。そして責任ある判断が出来るように全力を尽くしているだけさ。だから今回新たに工場を建てる時も「どんなスノーボードファクトリーを建てるか」というのが一番のトピックであり、シェアホルダーを含めて一致した意見が「責任のあるスノーボード造り」だったのさ。ただ単に5年間だけしか持たないような工場を造る事なんてしたくない。50年たってもスノーボードを造り続けられる工場を建てる必要があった。じゃあ、50年後の地球はどうなってると思う?簡単に石油を使い、化石燃料を燃やして工場を稼動できるなんてオレは思わないね。

F:ブルーを含めて全員の意識が同じ方向に向いているんですね。

B:そう。むしろクリーンエネルギーに関しては議論にもならなかったよ。「もちろんだろ」って感じでね。そして次の問題が「じゃあ、どうやってその工場を実現させるか」だった。オレ達は科学者でも無ければ環境評論家でもない、スノーボーダーだ。それでもクリーンエネルギーをつかった工場を実現させる方法を考えないといけない。そのためデザインやエンジニアリングに3年をかけ、1年を建設に費やした。よく考えてみろよ、建てるのは1年かかったけど、アイデアを練って構想するのに3年かけたんだ。オーストリアの素晴らしいチームと協力して実現できたことは本当にラッキーだと思っているし、政府もバックアップしてくれた。地域の雇用も生み出したし、クリーンエネルギーを利用した工場は村の誇りにもなっている。

昨年11月、オーストリアに誕生したマザーシップ。未来を守る為に考えられたファクトリー。それは環境にも、地域にも、スノーボードカルチャーにも持続させる可能性を持つ事。最高のスノーボードを作るゴールへ向かい進みだした。この模型はマザーシップのミニチア
昨年11月、オーストリアに誕生したマザーシップ。未来を守る為に考えられたファクトリー。それは環境にも、地域にも、スノーボードカルチャーにも持続させる可能性を持つ事。最高のスノーボードを作るゴールへ向かい進みだした。この模型はマザーシップのミニチア

F:オーストリア政府は今回の工場建設に対してかなりバックアップしてくれたって聞いてますが、もしアメリカで同じ計画を立てたら実現していましたか?

B:いい質問だな。うーん。どうかな、わからないよ。可能かもしれないな、Everything is Possible (不可能は無い)って言っちゃったしな。でも政府のバックアップ、地域の雇用、職人技術、そしてオーストリアのアルパインスピリット、そしてオレ達は2002年からその場所でスノーボードを造ってきたわけだし、特にオーストリア以外で工場を建てる理由もなかったからね。

F:マザーシップが立ち上がって、テクノロジーの面で変化した所はありますか?

B:オレ達は今まで、世界最高のスノーボードを造ることに専念してきた。毎年テクノロジーも向上し、クオリティも良くなる。そこで重要なのは「どれだけクリーンか」という事じゃなく、「どれだけ効率的か」という事。2009年、オレ達はGreen Machineというボードをリリースした。植物由来のレジン、リサイクル素材のABSサイドウォール、RFC認証のウッドコア等、当時もっとも環境に配慮したスノーボードを造り上げた。そこで学んだことは多くあるよ。まず一つはカスタマーがボードを選ぶ理由は、他のボードを選ぶ理由と同じだという事。それはグラフィックやシェイプが基準であり、そのボードがどれだけ環境に配慮しているかというのはあまり重要じゃないかった。そしてもう一つ学んだことは環境に対する配慮だけではなく、ブランドとして責任ある決断が必要であるという事。たとえば「この製品は環境にやさしいから買うべきだ」なんて言っておいて、会社自体が最悪の決断をしているよじゃ矛盾しているだろ?その製品だけじゃなく、それを取り囲む全てのものにおいて責任のある選択をし、地球に対してインパクトを減らすことが大事なんだ。


スノーボーディングの未来を守るため。CAPiTAの理想を具現化する、スノーボーダ­ーが造る、スノーボーダーのためのスノーボードファクトリー「マザーシップ」が­始動。世界最先端の技術を持ち、環境にも配慮した自社工場の全貌を明らかにす­るムービー。

先日、2/16〜18に横浜でおこなわれた来期プロダクトが発表される展示会SBJでは、マザーシップの誕生を記念したパーティーがおこなわれた。ブルーもこれにあわせて来日し、CAPiTAブランドやマザーシップへの思いを伝えた
先日、2/16〜18に横浜でおこなわれた来期プロダクトが発表される展示会SBJでは、マザーシップの誕生を記念したパーティーがおこなわれた。ブルーもこれにあわせて来日し、CAPiTAブランドやマザーシップへの思いを伝えた
パーティー会場となったCAPiTAブースには、全国から集まった沢山のショップやライダー、関係者が集まりスノーボーディングの話題が尽きなかった
パーティー会場となったCAPiTAブースには、全国から集まった沢山のショップやライダー、関係者が集まりスノーボーディングの話題が尽きなかった
日本のスノーボードシーンを古くから牽引し続ける、LIB TECHなど数多くのアメリカブランドのディストリビューターを務めるアドバンスの社長、マイク宮澤氏もこの日はCAPiTAへ熱いメッセージを贈る
日本のスノーボードシーンを古くから牽引し続ける、LIB TECHなど数多くのアメリカブランドのディストリビューターを務めるアドバンスの社長、マイク宮澤氏もこの日はCAPiTAへ熱いメッセージを贈る

F:最後の質問です。今のスノーボードシーンに欠けてるものってあると思いますか?

B:ハッキリ答えれるよ。欠けてるものは何も無いってね。今のスノーボードシーンは最高だと思う。あえて一つだけ欠けてるものがあるとすれば、それはポジティブなエネルギーだろうね。心理学ではネガティブエネルギーはポジティブエネルギーより大きなパワーを持つともいわれてる。経済的危機、雪不足、様々なチャレンジがある。そのなかでスノーボード業界はというと、常に「上手く行かない事」ばかりを話してる。ネガティブなことばかりをね。でもな、それが14歳のスノーボーダーに関係あるか?全く関係の無い事だろ?彼らはただスノーボードをしたいだけさ。だから業界は気づくべきだ、なぜ次から次へとチャレンジがのしかかるのかって。ネガティブな要素はマーケットには全く無縁だ。ポジティブエネルギーこそがマーケットに必要な財産。そしてオレ達の仕事はキッズがワクワクするようなものを生み出すこと。業界も、メディアも、ブランドも、全てがカスタマーをワクワクさせなきゃいけない。だから、なにが欠けてるかって?なにも欠けてはいないさ。製品もアスリートも、ギアのテクノロジーや環境も、スノーボードの歴史の中で最高の位置にある。「スノーボーディングが世界を変えている」って業界が自信をもって声を上げるべきなんだ。それだけが今欠けている要素さ。

F:もう一つ最後に。日本のCAPiTAファンになにかメッセージは?

B:Thank you! Thank you! Thank you! Thank you very much! いつもサポートしてくれて本当にありがたく思ってるよ。今のCAPiTAは全ての人達のサポートがあってここにある。日本のファン、スノーボーダー、ディストリビューター、パートナー、全ての人達のお陰さ。心から感謝したい。アリガトウゴザイマス!

ブルー・モンゴメリー氏インタビュー 「限界を作らずに未来へとスノーボーディングを守っていく」<前編>

BLUE MONTGOMERY
born February 23, 1974 in Marshalltown

J_E5A5611Interview&Transration: Kenji Kato, Photo: Yoshifumishimizu

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